2018年2/11 若い人のための日曜日の聖書  年間第六主日  マルコ1:40-45

今は記念館となっている復生病院の古い建物

あなたは想像ができますか? 伝染する病気だからという理由で、子どもに石を投げる大人を。

25年以上前、シスターの卵として養成されている最中に、静岡県御殿場市にある神山復生病院を訪問しました。「大人に石をぶつけられたことがある」と、その時、一人の入所者の方が語ってくださいました。

ここは、1889(明治22)年に、フランス人の神父様によって設立され、現在にいたる、日本で一番古いハンセン氏病の方々のための病院です。今は、ふつうの病棟とホスピス病棟があり、一般外来も受け付けていますが、長いあいだ法的なしばりもあり、閉ざされた世界でした。そして、発症してから長い時間をかけて次第に進行する、特効薬もない患者さんたちを、神父様やシスターたちが看護していました。私が訪問した時、この病院の院長は、M学園で長く教えていらしたSr.湯川の妹さんで、「クリスト・ロワ修道会」のシスターでした。

さて、特効薬ができたのが第二次世界大戦後。でも、法的なしばりはその後も続き、差別を助長していました。多くの患者さんが、家族と縁を切り、名前を変えて入院し、特効薬によって快癒しても世間に出ることができなかった、と聞きました。現代のエイズの患者さんたちより、さらに厳しい状況に置かれていた、と言えるかもしれません。

私がその時お話をうかがった方は、五歳で発症し、親元を離れて病院に入り、そのまま病院でほぼ一生を送られている方でした。病気で容貌が変わった子どもに対し、まるで野良犬でも追い払うように石を投げつけた大人は、どんな人だったのでしょうか。淡々と語られた話に、私は言葉を失いました。

イエス様は、もちろん特効薬のなかった時代に、おそらくハンセン氏病と思われる「重い皮膚病」にかかった人に「手を差しのべて・・・触れ」てくださいます。だれも触れたがらない、それどころか、古代ユダヤでも同じく、だれも近寄ってくれない、石を投げられた経験があったかもしれない人に、イエス様は触れます。神様だから感染しない? いいえ、イエス様が、完全な神であり完全な人間であった、ということは、感染の危険性を負っていらした、ということです。

たとえ体が健康であったとしても、イエス様は同じように私の暗い部分、汚れた部分、黒歴史の部分にも手をのべて触れてくださいます。そして清めてくださいます。私が、罪の中にいることを望まないから。このイエス様の手を感じましょう。イエス様の手が私を清め、罪に走りそうな時にも助けてくださいますように。 (Sr.斉藤雅代)

≪聖書箇所≫ マルコ1:40-45

(そのとき、)重い皮膚病を患っている人が、イエスのところに来てひざまずいて願い、「御心ならば、わたしを清くすることがおできになります」と言った。イエスが深く憐れんで、手を差し伸べてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、たちまち重い皮膚病は去り、その人は清くなった。イエスはすぐにその人を立ち去らせようとし、厳しく注意して、言われた。「だれにも、何も話さないように気をつけなさい。ただ、行って祭司に体を見せ、モーセが定めたものを清めのために献げて、人々に証明しなさい。」しかし、彼はそこを立ち去ると、大いにこの出来事を人々に告げ、言い広め始めた。それで、イエスはもはや公然と町に入ることができず、町の外の人のいない所におられた。それでも、人々は四方からイエスのところに集まって来た。