「世界一貧しい大統領」の異名をとったウルグアイの前大統領ホセ・ムヒカ氏。
先週、上院議員からの引退声明が発表されました。
85歳というご高齢から当然のこととはいえ、「高潔な魂をもった政治家がいなくなる」という寂しさを感じました。
引退声明の中の「議員の仕事は人と話し、どこへでも足を運ぶことだ」、それがコロナ感染の恐れからできなくなったから引退、という説明がこれほど真実に響く政治家もそれほどいないのではないでしょうか。
どこへでも足を運ぶ政治家はたくさんいます。でも、何のためでしょうか。
選挙の票の獲得のためでしょうか。
それとも、人々、とりわけ貧しい人々の声を聞き、現状を知るためでしょうか。
さてこのムヒカ氏は2016年に日本を訪問された後、メッセージを出しています。
日本の繊細で洗練された文化を誉め、勤勉さをたたえた後、彼は次のように続けます。
「ただその一方で皆さんがあまりにも仕事に没頭している姿を見て心配にもなってきました。
日本人は本当に幸せなのだろうかと。
子どもたちや友人たちと過ごし、愛するための時間があるのだろうかと。
あるいは皆さんが仕事の心配や仕事の準備をしているうちに人生が過ぎ去ってしまうのではないかと。
私には答えを見いだすことができません」。
図らずも、コロナ騒動によって、今まで当たり前とされてきたことに疑問がもたれています。
満員の通勤電車、始業時に全員がそろっていなければならない制度や、上司の仕事が終わらないなら部下も帰れない雰囲気など。
一方、緊急事態宣言の頃、しばらく見なかった光景を目にしました。
平日の午後早くから、親子連れで買い物をしている姿。公園で遊んでいる親子など。
もちろんよいことばかりではなかったでしょう。一家で同じ屋根の下に暮すことが、さらなる虐待に繋がった悲しい例もありました。しかし、私が出会った親子連れ、家族連れはみな、のんびりと幸せそうでした。
先週私は「唯一もっていって神様にお返しできるのは、人を愛した魂のみ」と書きました。
今週の福音箇所でイエス様はあらためて、私たちに「愛する」こと、神を愛し隣人を愛することが何よりも重要であると教えてくださいます。愛するためには、できるならば共にいること、時間と場所を共有することがとても重要です。
神様をお愛しするためにも、祈りという形で時間と場所を共有することが。
神様、どうか私の心の中に、あなたと隣人を愛するための場所と時間をください。
この願を、今週、どうぞ心に留めて私が生きられますように。 (Sr.斉藤雅代)
≪聖書箇所≫ マタイ 22:15-21
(そのとき、)ファリサイ派の人々は、イエスがサドカイ派の人々を言い込められたと聞いて、一緒に集まった。そのうちの一人、律法の専門家が、イエスを試そうとして尋ねた。「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか。」イエスは言われた。「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。」