「エーッ、スッゴーイ!」
中高生と共にこの聖書箇所を読むとき、必ず、1タラントンの価値を確かめました。そうすると、彼らはこんな驚きの叫びをあげます。
1タラントンはおよそ6000デナリオンで、1デナリオンが一日の賃金と言われます。
。1年に300日働くとすれば、6000日働くには20年かかります。
一日に8時間働いたとして、現在の東京都の最低賃金は1,013円ですから、1000円で計算したとして
8,000×6000=48,000,000円
「エーッ、スッゴーイ!」という声が理解できますね。
こんな大金をポンと僕に預けるなんて、なんと気前のよい「主人」でしょう。
学校の責任者をしている時、予算外で出費できるお金はわずかでした。今は、修道院で責任をもっていますが、一存で出費を決められるのはやはりわずかで、洗濯機1台すら買えません。
昨日までの一週間あまり、調布教会の神父様からの依頼で、ヴェトナムの女性、アンさんが修道院と同じ敷地内にある宣教センター「友愛の家」に滞在していました。2月に来日して、仕事は見つかったけれど家探しをする間、滞在させてほしいという依頼でした。最低賃金よりほんのわずか高いだけのパートタイムをしながら住むところを見つけるのは大変なことでしょう。運よく、外国人同士のシェアハウスが見つかったとのことで、昨日引っ越しました。わずかな滞在でしたが、ちょうど友愛の家の洗濯機が壊れていて、気の毒でした。中古を探しているうちに、彼女の住まいの方が先に決まってしまい、引っ越しの翌日、つまり今日、洗濯機が入りました。それでも、別れ際に「ありがとう、ありがとう」とたどたどしい日本語で繰り返し、後で、以下のようなメッセージが入りました。
シスター、過ごした1週間で心配してくれてありがとうございます。いつも良い健康をお祈り申し上げます。時間があれば、また行きます。おやすみなさい。アンです。
私は、1タラントン以上の価値をもつ「一人の人」を神様から任されたのだ、と悟りました。最高のことはしてあげられなかったけれど。
タラントンのたとえ話は、たいてい、神様が自分に与えてくださった才能や能力(まさにタレント)をいかに開花させるか、と解釈されます。特に、学校社会の中では。
でも、今回私には、アンさんのことと重なって、大きな価値を任せていただいた喜びを読み取りました。
神様、また修道院にだれかを送ってくださいね。私がもっと、あなたからの贈り物であるタラントンを感じられるように。今度は洗濯機もありますし! (Sr.斉藤雅代)
≪聖書箇所≫ マタイ 25:14-30
(そのとき、イエスは弟子たちにこのたとえを語られた。)「天の国はまた次のようにたとえられる。ある人が旅行に出かけるとき、僕たちを呼んで、自分の財産を預けた。それぞれの力に応じて、一人には五タラントン、一人には二タラントン、もう一人には一タラントンを預けて旅に出かけた。
早速、五タラントン預かった者は出て行き、それで商売をして、ほかに五タラントンをもうけた。同じように、二タラントン預かった者も、ほかに二タラントンをもうけた。しかし、一タラントン預かった者は、出て行って穴を掘り、主人の金を隠しておいた。
さて、かなり日がたってから、僕たちの主人が帰って来て、彼らと清算を始めた。まず、五タラントン預かった者が進み出て、ほかの五タラントンを差し出して言った。『御主人様、五タラントンお預けになりましたが、御覧ください。ほかに五タラントンもうけました。』主人は言った。『忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。』
次に、二タラントン預かった者も進み出て言った。『御主人様、二タラントンお預けになりましたが、御覧ください。ほかに二タラントンもうけました。』主人は言った。『忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。』ところで、一タラントン預かった者も進み出て言った。『御主人様、あなたは蒔かない所から刈り取り、散らさない所からかき集められる厳しい方だと知っていましたので、恐ろしくなり、出かけて行って、あなたのタラントンを地の中に隠しておきました。御覧ください。これがあなたのお金です。』主人は答えた。『怠け者の悪い僕だ。わたしが蒔かない所から刈り取り、散らさない所からかき集めることを知っていたのか。それなら、わたしの金を銀行に入れておくべきであった。そうしておけば、帰って来たとき、利息付きで返してもらえたのに。さあ、そのタラントンをこの男から取り上げて、十タラントン持っている者に与えよ。だれでも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。この役に立たない僕を外の暗闇に追い出せ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。』」