開催が懸念されたパラリンピックが始まって１週間あまり。私は熱心なTV観戦者ではないけれど、ニュースの前後などに目に入る競技の様子には心打たれるものがあります。

たとえば視覚障害者の陸上競技の「ガイドランナー」。

「きずな」と呼ばれるロープ(この命名もすごい！)で繋がって、走者の目の代わりとなる彼らは、走者と同じく素晴らしいと思う。一人で全行程をこなすならメダルも授与される、と知って納得でした。

それから「混合舵手付きフォア」。

混合の意味は、男女２人ずつだからなのか、異なる障がいをもった人がチームになるからなのか、わかりませんでしたが、ただ一人健常者のコックス(舵手)がガイド役を務める様子は、まさに共生社会を象徴しているようでした。

さらに結果はまだですが、オリンピックの金メダルを上回る記録が出そうな幅跳び！

オリンピック同様、パラリンピック開催にも様々なご意見はあるでしょうが、間違いなく、イエス様はアスリートたちを見てお喜びだと思います。

なぜなら、多様な人々が、多様性を生かしあいながら、それを寿いでいるから。

今回の福音箇所では、ユダヤ教の伝統を大切にする人たちと、そのことに優先順位を置かないイエスの弟子たちの様子が描かれています。

イエス様は、預言者イザヤが受けた神のことばを引用します。

「この民は口先ではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。人間の戒めを教えとしておしえ、むなしくわたしをあがめている」。

食事前に手を洗うのは、現代人には当然のことですし、特にコロナ禍を生きている私たちにとっては、自分のためだけでなく周りの人に対しても必要なことです。

イエス様が問題にされているのは、もちろん衛生上の問題ではなく、律法には記されていない「昔の人の言い伝え」が、それそのものはよいことであったとしても、義人と罪人を分ける尺度として扱われていることでしょう。

だから、さらに厳しくおっしゃるのです。
「あなたたちは神の掟を捨てて、人間の言い伝えを固く守っている」。

何かにこだわるとき、かえって「神の掟」、つまり本当に大切なことを捨てて、「いわゆる常識」の箱から出ないことになると。

パラアスリートの姿が美しく感動的なのは、彼らが最初から持っていなかっもの、あるいは失ってしまったものを追い求めず、自己のベストを尽くそうとしているからです。そこに健常者も、自分に与えられているものを驕ることも恥じることもせずに協力していくとき、素晴らしい共生社会が生まれるだろうと思います。

幅跳びには、義足の方が有利に違いない、という横やりが入っているようですが、これこそが「いわゆる常識」で、これを問題視しているのが健常者であるなら、同じ健常者として恥ずかしい限りです。

そして思うのです。神様の目から見たら、この世に健常者などはいず、私たちはみな何かしら足りない者であって、コックスであるイエス様を先頭に共にこの世という舟をこいでいくのではないでしょうか。

大学時代の全盲の友人の言葉。「目が見える方が普通だなんて、誰が決めたんんだ？」

 

≪聖書箇所≫　マルコ 7:1-8, 14f, 21-23

（そのとき、）ファリサイ派の人々と数人の律法学者たちが、エルサレムから来て、イエスのもとに集まった。そして、イエスの弟子たちの中に汚れた手、つまり洗わない手で食事をする者がいるのを見た。――ファリサイ派の人々をはじめユダヤ人は皆、昔の人の言い伝えを固く守って、念入りに手を洗ってからでないと食事をせず、また、市場から帰ったときには、身を清めてからでないと食事をしない。そのほか、杯、鉢、銅の器や寝台を洗うことなど、昔から受け継いで固く守っていることがたくさんある。――そこで、ファリサイ派の人々と律法学者たちが尋ねた。「なぜ、あなたの弟子たちは昔の人の言い伝えに従って歩まず、汚れた手で食事をするのですか。」イエスは言われた。「イザヤは、あなたたちのような偽善者のことを見事に預言したものだ。彼はこう書いている。
『この民は口先ではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
人間の戒めを教えとしておしえ、むなしくわたしをあがめている。』
あなたたちは神の掟を捨てて、人間の言い伝えを固く守っている。」
それから、イエスは再び群衆を呼び寄せて言われた。「皆、わたしの言うことを聞いて悟りなさい。外から人の体に入るもので人を汚すことができるものは何もなく、人の中から出て来るものが、人を汚すのである。 中から、つまり人間の心から、悪い思いが出て来るからである。みだらな行い、盗み、殺意、姦淫、貪欲、悪意、詐欺、好色、ねたみ、悪口、傲慢、無分別など、これらの悪はみな中から出て来て、人を汚すのである。」