こんな生徒いたなぁ、こんな子もいたなぁ、こんなお母さんいたなぁ、こんな教師いたなぁ…
『かがみの孤城』の読み始めは、元教師である私にとって、とても辛かった。
人の、そして大人の裏に気付き始めたいじめられっ子。
その繊細さに理由なく苛立ついじめる子。
ハラハラ、ドキドキしながら見守り、時に「やはり学校に行って欲しい」という本音の出てしまうお母さん。
いじめを認めず、何とかクラスを丸くおさめたい担任教師。
それぞれの気持ちが、個人的な思い出と重なり、手に取るように理解できて、辛かった。
今やどこにでもある教室と家庭の風景なのかもしれない。
しかし、この「どこにでもある風景は、作者の見事なファンタジーの世界に引き込まれ、思いがかけない解法に向かう。
友情、兄弟姉妹愛、大人の子どもに対する細やかな関わり―つまるところ愛が子どもたちを再び生かしていく。
私は続けて二度繰り返して読んだが、二度目は、いかに最初の場面から緻密に計算された小説かが分かり圧倒された。
中高生の置かれた環境や教育に興味のあるすべての人にお勧めです。