朝顔と『方丈記』

夏ももう終わり。朝顔が最後の輝きを放っているようです。

朝顔を見ると必ず思い出すのが『方丈記』。

「世にある人とすみかと、無常をあらそふさま、いはば朝顔と露に異ならず。」

このくだりを読むと、鴨長明の観察眼の鋭さに気づきます。

若い頃は、『方丈記』の「無常観」が、何となく後ろ向きな感じがしていました。しかし、年を経て、また、何度かヴィパッサナー瞑想を体験することで、そうではないことに気づきました。

はかなく、移ろいやすく、限りがあるからこそ、「今、このとき」に目覚めて生きる。長明の観察眼も、この姿勢から生まれたものかもしれません。そして、小さな庵で仏道修行の生活をしながらも、愛する琵琶や琴を手放さなかったところに、生きることの現実をよく知り、命を抱きしめて生きていた姿がうかがえます。多くの災害や戦乱を経て、静かにこの世界と、命と向き合って、この世を越えたものに眼差しを注いで生きた長明。今は大好きな作品の一つです。

(Sr.中本敦子のFaceBookより)