源氏物語はいかがですか?

       現代の源氏物語絵巻
       「あさきゆめみし」

今の若い方々の読書の中で、古典はどのくらいの比重を占めているのだろう。とりわけ「源氏物語54帖」と聞くと高校以来ご無沙汰という人が多いだろうか。

私がこの愛する源氏物語に出会ったのは、小学校6年生(だと思う)の国語の教科書で「若紫」の巻。

かわいい女の子(若紫)の傍に、鳥籠があって、もう一人の女の子(犬君)の挿絵があり「犬君(いぬきという名の幼い侍女)が雀の子を逃がしたの」と訴えている場面を口語で読んだ記憶がある。

多くの人が「桐壷」から始まって、「須磨」「明石」の巻までぐらい読んでくると、くたびれてここらで挫折することを「源氏の須磨帰り」と言ってきた。

「源氏物語は、人間とは、女とは、どうあるべきかを示唆すもの…一夫多妻の制度のもと、人間としての女の生き方を追求したもの…一千年の時空を超えて現代に生きる私たちに、人間の真の幸福とはなにかを教えてくれる」という村山リウの解説を読んだことがある。

確かに登場人物はなんといっても、圧倒的に女性が多い。作者紫式部は「いじわるオバサン」ではないかと思うほどの女性像も書いている。時代は変わり、生きる環境が違っても「女」であることには変わりはない。

この物語の舞台の中で、女としての喜びと悲しみと苦しみの中にあって、彼女たちはどんな生き方をしたのだろう…?あのスーパースターとして書かれている源氏の君に愛された人、紫の君はほんとに幸せだったのか…?その源氏の君の愛を最後まで拒み通して「深く思ふさまになつかしき人」と生きた姫君、男女の仲ではなく、地位や門閥のきびしかった中で平凡な生き方を通して源氏にとって、不可欠な女性として生きた女性…など、私はこれらの女君に興味を持って読んだことがある。

物語の大勢の女性の中に、あなたのお友達となる人はいませんか?あなたに力を与えてくれる女君はいませんか?

折を見て彼女たちを物語の中に訪ねてみてください。

(Sr.辻上好子)